大阪で活動している認定ドッグビヘイビアリストです。
南イリノイ大学で犬猫の基礎栄養学~臨床栄養学を学び、総合栄養食の手作り食レシピ作成も行っています。
いままで沢山のカウンセリングをしていると、犬の行動を変える「責任」について、実感させられる出来事に、たびたび遭遇します。
例えば、ご相談頂いた犬が
・違和感のある歩き方
・違和感のある行動
上記のような、疾患の疑いがあるように思える犬の場合は、トレーニングを本格的に行う前に、動物病院に行って診察を受けるようお願いしています。
実際に、いままでご相談いただいた中で、動物病院に行って頂いたことで、疾患が見つかり、治療・手術すると問題行動が自然となくなったケースも少なくありません。
今回は、「犬の行動を変える責任」についてシェアしようと思います。
特に、プロのドッグトレーナー、犬の行動コンサルタント、ドッグビヘイビアリストなどの方に是非読んで欲しい内容です。
目次
犬の行動を変えるためのロードマップ
世界のドッグビヘイビアリスト、犬の行動コンサルタント、ドッグトレーナーが参考にするスーザンフリードマン博士によると
犬の行動を変えるときのアプローチの順番は、
- 栄養的・身体的な健康
- 先行事象のアレンジメント
- 正の強化
- 代替行動の分化強化
- 消去、負の強化、負の弱化
- 正の弱化
であると提唱しています。
もちろん私もこの順番に沿って、犬の行動変容をしています。
ところで、現在私のところへご相談頂くのは、既に2~3名のプロのドッグトレーナー、動物行動治療科などへご相談されていらっしゃる方たちです。
今後の行動修正プランを組むために、過去にしたトレーニングのお話しをお伺いするのですが、ほとんどが上記の①「正の強化」もしくは⑤「消去、負の強化、負の弱化」から始めています。
稀ではありますが、⑥「生の弱化」からアプローチしてしまうトレーナーも…
これでは、犬の行動を変えるのに失敗して当たり前であると言えます。
犬の行動を変えるためには、まず「栄養面の問題は無いか?」「身体的な健康はないか?」をクリアしたうえで、「先行事象のアレンジメント(適切な環境設定)」そして、必要に応じた正の強化の手法を用いたトレーニングを行っていくべきです。
実際に、イギリスのドッグビヘイビアリストは、獣医師の診察を受けた後でないと、行動改善の依頼を受けない方もいらっしゃるぐらい、「栄養的・身体的健康」は重要な要素です。
犬の行動は正常か異常か?
では、
・栄養状態が問題無いか?
・身体状態が問題無いか?
見分けるためには、どうしたらよいのでしょうか。
見極める方法は沢山あるのですが、1つの方法として、犬の行動が「正常行動」か「異常行動」かを見極めることが挙げられます。
正常行動と異常行動については、「愛犬の行動は問題行動なのか!?~問題行動の見極め方~」で詳しく説明していますので、良く分からない方は以下の記事をご参考にしてください。
▼正常行動と異常行動の見極め方
もし犬が異常行動をしている場合、なぜその行動をするのか分析していく必要があります。
学習により異常行動をする場合もありますし、体の問題(身体的・栄養的な問題)で異常行動をとる場合もあります。
たとえば…
犬が自身の手を過剰になめる行動(異常行動)
・学習…犬が手を舐めることで飼い主が注目してくれる。
(飼い主の注目が強化子となって、手を舐める行動が強化される。)
・身体的(栄養的)問題…痛み・痒みなどの違和感により舐める。
学習の場合は、プロのドッグトレーナー、犬の行動コンサルタント、ドッグビヘイビアリストなどが介入できる領域です。
一方で、身体的(栄養的)問題が絡んでいる場合は、 プロのドッグトレーナー、犬の行動コンサルタント、ドッグビヘイビアリストなどが 介入できません。
もちろん、獣医師と連携して、行動改善を図ることは良いことだと思いますが、身体的(栄養的)問題が解決できていていないまま、犬の行動を変えると、より身体的・行動的な問題が悪化する可能性が高いです。
では、過去に私のところへご相談頂いた、身体的(栄養的)問題に関する、2つのケースをご紹介します。
①身体的問題のケース
あるとき、若いトイプードルの飼い主様に「愛犬が散歩で歩かなくなった」とご相談頂きました。
じっさいにトイプードルが室内で歩く様子を観察していると、若い割にはあまり活動的でないことに少し違和感を感じました。
また、子犬の頃は、活動的でご自宅にある階段も難なく上り下りしていたのが、数か月前から躊躇する行動もあるとのことでした。
過去~現在にかけて詳細にヒアリングした結果、身体に異常がある可能性があると考え、トレーニングを始める前に動物病院で検査を受けてもらうことになりました。
結果、アジソン病と発覚しました。
その後は、適切な治療を受けて、活動量も増えたそうです。
ケースデータ②過剰な拾い食い
あるパピヨンの飼い主様に「愛犬の拾い食い、特に草を食べるのが酷い」とご相談いただきました。
様子を見てみると、確かに草食動物のように、生えている草をかたっぱしから食べていきます。
また、普段から吐くことが頻繁にあるとのこと。
この草を食べる行動は、正常行動とは言い難いことから、念のため動物病院へ診察して頂きました。
結果、血液検査は特に問題なく、身体面の異常は無いようでした。
そこで、飼い主様には栄養面の改善を中心として行うことをご提案しました。
食事内容を変更してから3週間後には、ほとんど草をたべなくなり、頻繁に嘔吐していたのもなくなりました。
わたしの経験上、犬の問題行動のうち
・「食べる」に関連する問題
・飼い主の行動が強化子になっていない可能性が高い
上記の2つを満たす場合は、栄養の改善で大きく行動が変わるケースが多くあります。
例)食糞、異食症、フードアグレッシブ(食物関連性攻撃行動)など
まとめ
犬の行動は、「SOS」である可能性もあります。
上記でご紹介した2つのケースは、応用行動分析学を用いたトレーニング方法で飼い主が望む行動に誘導していくことは恐らく可能です。
しかし、この「SOS」を見逃して、人の望む行動を強制的にトレーニングすることで、問題がより深刻になる可能性もあります。
オヤツ(食べ物)を使用していたとしても、犬に強制していることもあるので要注意です!
犬の行動を変える場合は、かならず「栄養面・健康面」には問題ないか確認したうえで、行うことをお勧めします。
とくにプロのドッグビヘイビアリストや犬の行動コンサルタント、ドッグトレーナー、訓練士などは、最後の砦です。
飼い主では気づけないような些細な違和感もプロの方が気づいてあげてくださいね。