大阪で活動している認定ドッグビヘイビアリストです。
南イリノイ大学で犬猫の基礎栄養学~臨床栄養学を学び、総合栄養食の手作り食レシピ作成も行っています。
愛犬が散歩中に、他の犬や人に向かって吠える…!
このような愛犬の行動は、実は飼い主が影響しているかもしれません。
目次
周りの人の表情で行動が変わる?
人間の子供は成長過程で、自分だけではどうしてよいか判断がつかない場合に、周りの人(親など)の表情や感情情報を手掛かりにして自分の行動を決めます。
これを心理学用語では、「社会的参照(Social referencing)」と呼びます。社会性を培っていくうえでとても大切な能力です。
社会的参照は主に2つの行動パターンから成り立ちます。
①対象物と周りの人(親など)を見比べて、なにか情報がないか探る
②周りの人(親など)の感情を手掛かりにして行動する。
子どもは未知な物に対して、自己判断ができません。
そのため、周りの人(親など)が肯定的な感情であれば肯定的に、否定的な感情であれば否定的に行動をとる傾向があります。
そして、社会的参照は大人でも起こります。
💡〈例〉
あなたの目の前に、宇宙人が突然現れたとします。その場に一緒にいた友人は宇宙人を見て「ギャー」と叫びました。(恐怖反応)
あなたは宇宙人に対してどのようなイメージを抱きますか?宇宙人に対し何かしらの恐怖心を持ち、安易に近づいたりしようとしないのではないでしょうか。
このように、社会性のある生物は他者の感情を読み取り、自分の行動を決めることが頻繁にあります。
犬の社会的参照
では犬でも「社会的参照」は起こるのでしょうか。
イタリアにあるミラノ大学の研究によると、犬は飼い主の表情や声などによって、未知な物への接し方が変化することが分かりました。
例えば、情報提供者が飼い主の場合…
・飼い主が肯定的な反応→犬は物体を積極的に確認しに行く。
・飼い主が否定的な反応→犬は物体を確認するのに時間がかかり消極的。
また、情報提供者が犬の知らない人だと、人の表情などは、あまり犬の行動に影響しませんでした。
つまり、犬の行動は人との関係性によっても影響される可能性があることが分かりました。
これに関係した例で、5歳雄(去勢済み)のダックスフンドが犬に対して吠える実際のケースをご紹介します。
まず、この犬が吠えている原因は、ボディーランゲージなどを見ると、恐怖心によって犬に吠えているようでした。そして、飼い主様もどう対応したらよいのか分からず、常にオドオドして不安な表情をしていました。
これでは、お互いに悪影響です。
そこで、まずは飼い主様の意識を変えて頂くことから始めました。リラックスして、堂々とした立ち振る舞いに変えて頂きます。すると、それだけで犬の吠える頻度が下がりました。(もちろん、吠えないようにトレーニングも行い、めでたく行動は改善されました。)
このように犬の行動は、飼い主の表情や態度次第で変化することが多々あります。
犬の積極性を引き出す方法
やっとになりましたが、犬の積極性を引き出す方法についてご紹介いたします。
上記で、飼い主様が肯定的な反応をすれば、犬も積極的に行動する傾向があることをご紹介しました。
つまり、犬の積極性を引き出す方法は…
💡犬の積極性を引き出す方法
飼い主は笑顔で犬の行動を見守る。そうすることで、犬の積極性を引き出し、伸ばすことが出来る。
社会的参照は、犬自身が自分の行動を決定するうえで重要な飼い主とのコミュニケーションだとも言えます。
危険なことをしそうなときは別として、基本的にはあれこれ指示しすぎないようにし、飼い主は暖かい表情で犬を見守ることが、犬の積極性を引き出す1つの方法であると言えるでしょう。
皆さんは普段、愛犬にどのように接していますか?
犬が不安に感じそうなシチュエーションこそ、飼い主がリラックスして笑顔でいると、愛犬はそれだけで安心することができます。
・Merola Isabella(2012),Dogs’ Social Referencing towards Owners and Strangers,PLOS ONE
・遠藤 利彦, 小沢 哲史(2001),乳幼児期における社会的参照の発達的意味およびその発達プロセスに関する理論的検討,J-STAGE